久しぶりに文章を書きたくなったので書いてます。
神出鬼没の佐藤雄樹です。こんばんは。
思うことあって書きたくなった恒例の深夜のアレです。
先日、4月から佐世保に異動するユリ子さんの最後の撮影を頼まれて、夜から出張って一仕事してきたのですが、その時出会ったモデルさんの話。
ユリ子さんから前もって聞いてた情報は「坊主頭の女の子」。
いやはやどんなパンチのあるTHE個性派女子がやって来るのかと当日を迎えた訳なのですが、いざ初めましてと対面してみると、それはそれはいい意味で思ってたのとは違う可憐な女の子でありまして。
「何でこの子が坊主頭を選んだんだろう」というような不意を突かれたような感覚に襲われました。
仕込みが終わり、撮影を始める時になって、色々と彼女とお話をすると、ちょっと話しただけで彼女の背景が見えてきて、今年31歳になろうとしてる倍くらい生きてる自分の人生が恥ずかしくなるほどのパンクスの持ち主だった。
多分、普通ならやらない坊主頭なので、今までも沢山の大人に「何でなの?」と言うような事はいっぱい聞かれて来たと思うし、何か特別な事情があってそうしてるのかも知れないし、聞いたところで気を悪くしちゃいけないと思って最初は聞かなかったのだけど、話の流れで掘り下げれそうだったので聞いてみた。
「何で坊主にしたの?」
そしたら彼女は淡々とこう答えた。
「自分のやりたい事に向き合う為に坊主にしました」
ドッカーンである。
その一言で、あ、今夜は絶対良いのが撮れるなと思えたし、そんなモデルさんを発掘して来たユリ子さんも天晴れだった。
(別にカメラの知識も何もない、素人に産毛が生えたレベルのアレなので「良いのが撮れるな」とか、とても偉そうなのですが、実際の所、撮る側の技術というのも勿論大事だと思うけど、作る側の気持ちというのも凄く大切で、作る側がその表現をお願いするモデル(素人)にどんだけその熱を伝えられるか、というのが作品に出ると思っていて、そういう意味でな)
彼女は美術をやっていて、油絵を専攻していて、東京藝大を目指しているとのこと。
ゆとりとかさとりとか言われてるこの時代に、自分のやりたい事を真摯に追い求める姿を17歳の女の子に教えて貰った気がした時間でした。
撮影は、ユリ子さんが今年、ヘアメイクの全国大会で入賞した作品のリメイク版で、いわゆるモードメイクという部類の作品だったのだけど、もちろん、「表現する」という事が日常茶飯事な彼女にとって、野暮な言葉は要らず、作品を創るということに照準がピタリとハマってとても心地良かった。
大体こういった刺激的な出会いがあった日には、自分を省みたり、自分の周りに想いを馳せたりする性分の僕は、例外なくそのモードに突入した。
最近、何でその世界に身を置いているんだろう、と思うような人をよく見かける。
自分には関係がないと割り切ってしまえばそれまでだけど、そうもいかない現状もあるもので、そんな現実に直面した時、大人は決まってこういうのだ。
「そんな時代だからね」
確かにその側面もあるかも知れないし、事実あると思うけど、そんな中でもこんな出会いもあるのだから、そう結論付けるのは時期尚早。
「自分のやりたいこと」があるのだとしたら、その過程にある困難も楽勝で乗り越えれるのが普通というか、紆余曲折しながらも、これがやりたいんだ!という最後の旗だけは折っちゃいけないというか、不動のポジションにあると僕は信じてやまなかったのだけど、どうも最近はそうじゃない人々もいるらしい。
残念なことに、光があれば影もあるように、冒頭の彼女のような人もいれば、実際社会に出てプロとして生きている人の中にも、一体何がやりたくてそこにいるの?というような人々はいるものだ。
(光が良くて影が悪いとか、そんな話ではないのであしからず)
もっと言えば、そもそも初めからそんなに興味がなかったとか、階段を1段上がる程度の所で自分には向いていないだとか、これは自分がやりたい事じゃないだとか、自分で選んだ道なのにやらされていると感じていたりと、そんなオチさえある。
だから”そんな時代”なのかも知れないけど、それがマジョリティになってしまったら、絶対にダメだと僕は思っている。
もちろん、自分に向いていないと感じたり、他にやりたい事が出来たり、ちょっと方向性が変わったり、好きでもない事をやるよりは、違うことをした方がいいのは分かっているけれど、実は始める前からそうだったとか、数ある選択肢の中から自分で選んだ道なんだろ?という前提がひっくり返るような有り様はどうも釈然としない部分があったりする。
仕事や自分の選択について、魂を込めるなどと高尚なことを声高らかに言いたいのではなく、自分が決めたことに逃げ癖をつけていつまでも言い訳体質じゃつまらんよということが最近思ったりすることで、別に彼女がやりたい事に集中する為に坊主にしたから凄いとか素晴らしいとか、そういう事ではなく、ただただ単純に、自分の心が動く対象に対してそこまで出来る気概の根底には、そういった最後まで折れない旗を持ち続けているからだろうな、という話。
折れない旗を持ち続けるプロセスを学んだり、経験したり、向き合うことが仕事だったりするんじゃないかと思うし、自分を成長させるエッセンスだと僕は思っている。
「人を美しくする」ことが仕事の僕たちにとっては、一見相反する瞬間もあったりするものだけど、そこを考えるのがまた楽しいというか、面白いのだけれどもですね。
実はこの文章は3月の終わり頃に書き始めたのだけど、書き終わったのが今日という事で、何となく、自戒を込めて更新しておこうと。書いていることは至極普通のわざわざ文章にするまでもない内容なのかもしれないのは承知の上で、あえて書いて残しておこうと思って書いています。
大好きなユリ子さんと一緒に働くのは今日が最後なので、そんなことを噛み締めながらいつも通り働きたいと思います。
2017 shu uemura ヘア&メイクアップコンテスト
浅野裕司審査員特別賞(リメイク版)
hair&make:YURIKO OGAWA (@ogawayuriko)
今更だけどブログ拝見しました。スミレちゃんとの出会いは私も自分を見つめ直すことが出来た。全然まだまだやれるなって。もっと頑張らなきゃと。さとぅの撮影と助手してくれたまいちゃんに感謝してます( ◜◒◝ )♡スミレちゃんが髪伸びたらお手入れに来てくれるって言ってたから、その時はよろしくお願いします!